その考えは非常に危険かもしれません。「台湾有事は日本有事」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、それは決して大げさな表現ではないのです。
もし台湾有事が起きれば、日本が「大丈夫」でいられる可能性は限りなく低く、専門家の間では「戦後最大の国難」になると広く認識されています。
その理由は、大きく分けて3つあります。
1. 安全保障:日本も戦闘に巻き込まれる可能性が極めて高い
- 地理的な近さ: 台湾と日本の最西端である与那国島は、わずか110kmしか離れていません。これは東京から熱海くらいの距離です。有事が起きれば、日本の領土・領海が戦場になる、あるいはミサイル攻撃の対象になるリスクは避けられません。
- 在日米軍基地の存在: 沖縄をはじめとする日本の米軍基地は、米軍が台湾を防衛する場合の最重要拠点となります。中国が米軍の介入を阻止しようとすれば、これらの基地へ攻撃を仕掛けてくる可能性は非常に高いと考えられています。
- 避難民の問題: 台湾から大量の避難民が、地理的に近い沖縄の島々へ押し寄せる可能性があります。その数は数十万人にのぼるという試算もあり、受け入れは困難を極めます。
2. 経済:私たちの生活を直撃する
- シーレーン(海上交通路)の破壊: 日本は、原油などのエネルギー資源や食料のほとんどを輸入に頼っており、その輸送船は台湾周辺の海域を通ります。有事になればこのシーレーンは封鎖、あるいは極めて危険な状態になり、石油や天然ガス、小麦などの輸入がストップする恐れがあります。ガソリン価格の暴騰、電力不足、食料品の値上がりや品不足は避けられません。一部の専門家は「日本国民は餓死する」とまで警告しています。
- 半導体サプライチェーンの崩壊: 日本だけでなく、世界中の電子機器に不可欠な高性能半導体の多くは、台湾のTSMCなどが生産しています。台湾からの供給が止まれば、自動車、スマートフォン、パソコン、家電製品など、あらゆるものの生産がストップし、日本経済は壊滅的な打撃を受けます。野村総合研究所の試算では、日本のGDPが最大で6.0%押し下げられる可能性が指摘されています。
3. 国際関係:厳しい決断を迫られる
- 日米同盟に基づく対応: 日本はアメリカと安全保障条約を結んでいます。米軍が台湾防衛のために出動する場合、日本が集団的自衛権を行使して米軍を支援するのか、あるいは後方支援に徹するのか、極めて厳しい政治的判断を迫られます。どちらの選択をしても、中国との関係は決定的に悪化します。
- 在留邦人の保護: 台湾には約2万人の日本人が住んでいます。有事が起きた際に、この方々をどう安全に避難させるかという極めて困難な課題に直面します。
結論
このように、台湾有事は「対岸の火事」では全くありません。安全保障、経済、そして私たちの日常生活の全てに、直接的かつ甚大な被害をもたらす可能性が極めて高いのです。
「日本は大丈夫」ではなく、「日本が当事者として、どうこの危機を回避し、万が一に備えるか」を真剣に考えなければならない。これが、現在の日本の安全保障における最も重要な課題と言えるでしょう。
コメント